カタログギフトの対象

心やすらぐゆとりの生活電話一本かなえます。
軽快なリズムのテーマ曲をバックに、最も注目すべき通販番組のホストが、眩いライトを浴びながら、緊張した面持ちで今、私の前に立っている。
時は二〇〇三年二月末日。
所は長崎県佐世保市内にある「JT」の自社スタジオ。
ライトに照らし出されるのは社長の、というより同社のシンボルであるTさんだ。
いつの間にか彼の朴訥な語りは全国を席巻し、その笑顔を見ない日はない。
Tさん率いる「JT」は、二〇〇一年二月に大規模な物流センターと受注センターを備えた新社屋を新設し、さらに同年三月には、自前の「Jスタジオ」を旧本社屋に開設、csデジタル衛星を通じ、佐世保から直接日本全国ヘテレビ放送を可能にした。
二〇〇二年度の売上高実績は六二四億円と、破竹の勢いのメジャー通販企業だ。
市内といっても、中心部から少し離れた幹線道路沿いのスタジオは、本社から歩いて数分の距離。
周りはロードサイド型の量販店やファミレスばかりという殺風景なロケーションだ。
やがてスタジオ手前の調整室に、もう一人のMc・塚本慎太郎と陣取ったTさんは、九州地区で生放送される一時間番組のために、本番前の張りつめた空気の中を待機する。
非常に合理的に建てられているが、それでも決して広くはないスタジオの中は、各テレビ局の重役、メーカー担当者、そしてニュース取材のスタッフで、まさにごった返していた。
私は忙しなく行き交うスタッフにぶつからないようウロウロ……。
遠巻きから懸命にカメラのシヤッターを切る。
番組はまさにその調整室から始まった。
Tさんと塚本の二人はそこで二言三言コメントしてからスタジオへと歩みを進める。
生放送の臨場感を出すための演出だ。
私はさしずめ王を取り巻く行列をかわすように、スタジオの隅にへばりつく。
いよいよ始まった、あの柔らかいテレビ通販のトーンでありながら、時声が絶妙に裏返る立て板に水の売り口上が!
さすが生放送、若いADがカンペを振りかざすものの、Tさんはほとんど見ていない。
しかも番組自体がコマーシャルだから、一時間ひたすらぶっつづけ。
本番中はTさんと塚本が交互に切れ目なく商品紹介を行う。
唯一息を抜けるのが、「金利手数料はJが負担します」という決め台詞で説明を終え、申し込み方法の画面が流れる十数秒の間だけだ。
彼らの名司会ぶりに舌を巻きつつ、見つめる私もそのジングルの間は大きく息継ぎができ、ホッとする。
商品にはこの日初めて取り上げるものもあるが、大体はおなじみの家電品。
サンヨーのカーナビ「ゴリラ」、ソニーのワイドテレビ「ベガ」、これなどはJだけで二万台の売上げを達成したとか。
「ベガ」ではお決まりのセット品がこれでもかとついてくる。
点数の出るパーソナルカラオケ「オンステージ」の紹介で、Tさんがなかなかの美声を披露するのも見慣れた場面だ。
スタンバイする各メーカーの担当者も、商品入れ替えの合間を縫って、自社製品のテレビ映りが少しでもよくなるよう、あれこれ気を回す。
そのうちTさんらは一言も噛むことなく、放送は終了。
ビ局の重役が、「いやー、勉強になりました」と、興奮した面持ちで頭を下げていたのはあながちお世辞でもないと思う。
本当にプロ顔負けの仕事ぶりだった。
男性はくびれ型、女性はビア樽型バブル以降一〇年以上の長期にわたる平成デフレ不況下で、通販業界だけが堅調といわれる。
唯一の業界団体である日本通信販売協会(JADMA)が算出した推計でも、二〇〇一年の業界全体の売上高は二兆四九〇〇億円といわれ、同協会が調査を開始以来、最高額を記録している。
前年度は二兆三九〇〇億円だから、その伸び率は四・二%。
微増ではあるが、右肩上がりが続いていることには違いない。
同年度の日本の小売業全体の売上高が一三六兆八七〇億円なので、そこに通販業が占める割合も一・八三%と前年比○∴一%増加している。
受容率の推移を男女別に見てみると、ここ数年、男性の利用率が急激に増えているのがわかる。
五三・六%にまで達し、女性の七六・九%との差は年縮んでいるのだ。
年齢別に見ると、六〇代の利用が増えている。
男女の年齢別構成比では、女性のトップは三〇代(八八・六%)、次いで四〇代だが、男性は六〇代と二〇代がほぼ六〇%前後で同じくらいだ。
これを人の体型に喩えていえば、男性はくびれ型、女性はビア樽型。
それぞれ膨らんだゾーンに、通販各社が狙いを定めがちなのも、ここから確認できる。
今後の「利用意向」に関してだが、二〇〇一年は「購入経験あり今後も利用」とする大が格段に増えたのが、一つの明るい兆候だろう。
ざっとこれが現在の通販に対する消費者の認識と見ていい。
ただ、これらの数字は、あくまで同協会会員社および非会員対象の郵送調査他、各調査機関の調査結果に基づき弾き出されたもので、かなり信憑性が高いとはいえ、ごく小規模の企業を加えると、実態はそれ以上の市場規模と思われる。
こうして、不況をもろともせずに成長を続ける通信販売業界が、どのように私たちの生活に根付いてきたか、その過程と背景、そしてビジネスモデルの秘密などを、代表的ないくつかの企業を中心に探っていったレポートが、これからお読みいただく本書の内容である。
超近代的なシステムこの通販を、現在のようにお茶の間に広く浸透させたのが「JT」であることはいうまでもないだろう。
「たかた」は地方の一企業であるが、その知名度とそれに比した近代的なシステムは、まさに「テレビ通販の雄」と呼ぶにふさわしい。
それは社屋にも表れている。
私は番組の見学前に、広報担当の佐伯卓哉に施設を案内してもらった。
ハイテクを駆使したスタジオでは収録や放送だけでなく、各テレビ局に送るテープのダビング作業なども行われ、CS用のV社TR放送も光ケーブル通信によって瞬時に東京に送られ配信される。
本社屋は埃からオペレーターの喉を守るため土足厳禁であり、三階の四〇〇〇uが柱なしという広いワンフロアに、受注、カタログ、インターネット制作、商品企画開発、イントラネット(社内情報網)構築などすべての業務が集約され、垣根なしに行われている。
二階は出荷事務センターで、一階は配送センター。
これがまたドでかい。
「たかた」独自のセット商品の場合、複数の商品も一つの段ボール、通称″たかた箱″にまとめて入れられ発送される。
バラで送るより手間はかかるが、そのほうがユーザーには便利だし、送料もかからないからだ。
さていよいよ、ひと仕事終えたTさんがインタビューに答えてくれた。
実際のTさんは繊細な気質に見受けられ、放送で疲れたのか掠れた声で、慎重に話に応じ始めた。
Tさんは一九四八年長崎県平戸市生まれ。
七一年大阪経済大学を卒業後、阪村機械製作所に入社する。
学生時代、ESS(英語研究会)に所属するほど英語好きの彼は、貿易部に配属後、ドイツ出向を命ぜられ、一年余りをヨーロッパで過ごしている。
当時は東西冷戦の真っただ中ではあったが、東ドイツのライプチヒやポーランドの工場などに派遣され、「世界的な視野でものを見る目を養われた」という。
七四年、故郷の平戸に帰り、父が経営する「カメラのたかた」を手伝う。
当時写真業界は、白黒からカラーに移行するころで、平戸の観光ブームの影響により忙しくなった家業を兄弟で手伝っていた。
そのようななか、「カメラのたかた」は支店を出店。

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